ヒュー・ジャックマン主演のミュージカル映画
「グレイテスト・ショーマン」(The Gratest Showman)を、
六本木TOHOシネマズで観ました。
ヒュー・ジャックマンが主演したミュージカル映画「レ・ミゼラブル」(2012)のオープニング興行成績を上回った、
ということでこの後もすごいヒット作になりそうです。
「グレイテスト・ショーマン」あらすじ
舞台は19世紀後半のアメリカ。
【The Greatest Show】
オープニングは、主人公P.D.バーナム率いるサーカス華やかなショーの場面から始まり、
彼の少年時代の回想につながります。
【A Million Dreams】
貧しい仕立て屋の息子だったバーナムは、父親と上流階級の屋敷に仕事に行き、その屋敷の令嬢チャリティと親しくなります。
バーナムと寄宿制の花嫁学校(フィニッシングスクール)に行ったチャリティは密かに文通を続けて夢を語り合いますが、父親を亡くしたバーナムは住むとところもなく、パンを盗んだりしてなんとか生き延びていました。
やがて、バーナムは「鉄道での仕事」の募集を知ります。
大人になったバーナムは、チャリティの家を尋ね、
結婚を申し込みます。
チャリティの父親は、「娘は貧乏暮らしに愛想をつかしてすぐに帰ってくる」と言い、
娘が家を出てくること自体は止めません。
マンハッタンの小さな家で暮らし始めた二人、やがて子供が生まれます。
それから数年が経ち、
貿易船の会社で働いていたバーナムは、飛行機をこの会社でも取り入れるべきだ、と提案しますが、会社は台風で12隻の船をすべて失って倒産し、バーナムは失業します。
荷物を片付けるときにバーナムは船の登録証をこっそり持ち出しました。
その日は下の娘の誕生日。
お金がないバーナムは屋上の洗濯物に影絵を映し出し、娘たちに願い事をいってごらん、と言います。
妹は「サンタさんと結婚したい」、姉は「バレエシューズが欲しい」。
そして妻のチャリティは「この幸せがずっと続きますように」。
チャリティは貧しくても今の暮らしに満足していますが、
バーナムは結婚を申し込んだときに妻の父親と妻に約束した「こんな屋敷に住ませて幸せにする」を果たせていない、と言います。
バーナムは、会社から持ち出した船の登録簿を担保に大金を借りて
博物館を始めます。
博物館、といってもろう人形や、アフリカの動物のはく製を並べた「見世物小屋」です。
しかしお客はほとんど入りません。
「生きているものがいなちゃつまらない」という娘たちの言葉、
そして、「親指のトム」の絵本を見て、
バーナムは、銀行で見かけた小人の男、
そして少年時代、盗んだパンを取り返された自分にリンゴを恵んでくれた異形の女性のことを思い出します。
【Come Alive】
バーナムは、病院の記録から小人の男を探し当て、「ショーに出れば喝采を浴びられる」と説得。
髭のある歌姫、レティも同じようにスカウトします。
さらに、「ユニークな人求む」という貼り紙をして、
巨漢や異様に背が高い男、全身入れ墨、空中ブランコ乗りの黒人の兄妹などを雇い、
ショーを始めました。
ショーは大ヒットしますが、一方でヘラルド紙の劇評家は「偽物」と酷評し、
フリークス(異形)を嫌う男たちが押しかけてきます。
しかし、バーナムは、
酷評が載った新聞を持参したら入場料を半額にする、と逆手に取り、
劇評家が使った「サーカス」(バカ騒ぎ)という言葉を、自分の興業の名前にします。
サーカスの興業は順調で、バーナムはチャリティの実家の近くに大きな屋敷を持ち、
バレエに憧れていた長女キャロラインにバレエを習わせます。
しかし、キャロラインはバレエのクラスメイトに成り上がりといじめられていることを知り、
自分自身も成功しても、NYの社交界では受け入れられていない、と痛感します。
【The Other Side】
バーナムは上流階級の出身でロンドンで成功した興業師のフィリップ・カーライルに、一緒に仕事をしようと持ち掛けます。
バーナムのような色物と組めばすべてを失いかねない、と躊躇するフィリップですが、結局バーナムの斬新なアイデアに魅力を感じ、売上の10%を自分の取り分とする条件を飲みます。
サーカスに来たフィリップは、空中ブランコ乗りのアンに惹かれます。
フィリップはコネを使って、ヴィクトリア女王の謁見の機会を取り付けてきます。
バッキンガム宮殿で、バーナムはスウェーデン人の歌姫ジェニー・リンドに出会い、
彼女の公演をアメリカで行えば、上流階級の人々にも認められる、と考えます。
【Never Enough】
ジェニー・リンドのアメリカ公演を実現したバーナム。
ジェニーのリサイタルは大成功をおさめますが、
チャリティは夫と自分の間に擦れ違いが生じていることを感じます。
公演後のレセプション会場で、
チャリティの父親を追い出したバーナムを見て、会場を後にするチャリティ。
ジェニーは、「恵まれている人たちには私たちの気持ちはわからない」と
バーナムに私生児として差別されてきた自分のことを語ります。
また、上流階級にも評価された、という成功を求めるバーナムは、
サーカスのメンバーを「目立ちすぎるから」という理由で最後列に立たせ、
レセプション会場からも締め出します。
【This is Me】
サーカスのメンバーは
「これが私自身だ」と堂々とコンサートホールを退場し、サーカスに戻っていきます。
その後、バーナムは、ジェリーの全米ツアーを計画し、自分はそこに同伴する、として
サーカスのことはフィリップに任せるようになります。
フィリップは、ジェニーのリサイタルで日、周囲の目を気にしてアンの手を放したことで
彼女との間に溝ができたことを後悔して、
こっそり、2人分のチケットを用意したコンサート会場で、アンをエスコートしようとしますが、
たまたま来合せていたフィリップの両親がアンを侮辱する発言をしたため、
アンは出て行ってしまいます。
【Rewrite The Stars 】
サーカスに戻ったフィリップは、アンに思いを伝えますが、
アンはフィリップに惹かれていることは認めながら、人種や差別の壁を超えることはできない、
と告げます。
【Tightrope】
バーナムはツアーに出発し、、
チャリティは子どもたちと後に残されます。
ツアーの途中、ジェリーは興行師と出演者の関係以上を求めていましたが
バーナムが「自分はもう帰る」と言ったために、
降板を宣言し、
その日のカーテンコールでバーナムにキスします。
一方、サーカスに反対する人々とメンバーがついに直接衝突し、
サーカスは放火されてしまいます。
ちょうどサーカスの建物が火事になったところに
バーナムは汽車でNYに戻ってきます。
アンが逃げおくれた、と思ったフィリップは炎の中に飛び込んでいきますが、
その直後にアンが現れ、
バーナムがフィリップを助け出します。
(「動物たちは?」「檻から出しました」という会話がありましたが、
その後回収できたのだろうか・・・?)
火事の後、バーナムの元を訪れた
ヘラルドの劇評家は、
「私は好きではなかったがサーカスは人々を喜ばせていた。芸術ではないが。
肌の色や見た目の違いを超えて全員が平等な立場で舞台に立つ。
もし、他の評論家なら、多様性の祝典と言っていただろう」
(ここ、文言は間違っているかもしれません)
と伝え、再建を祈る、と励ましますが、
同時に、ジェリーが公演を本当にキャンセルしたことや、
バーナムとのキスがスキャンダルになっている、というニュースももたらします。
バーナムは、家に帰り、チャリティにキスは仕組まれたことだ、と言いますが、
チャリティは、家を抵当に入れたことをどうして黙っていたのか、
相談してくれたら反対しなかった、と言い残して、実家に帰ってしまいます。
【From Now On】
バーで一人飲んでいるバーナムの元に、
サーカスのメンバーがやってきて、
いつまで自分を憐れんで落ち込んでいるのかと言います。
「(自分たちを雇った)目的は金もうけだったかもしれないけれど、
あなたは本当の家族と居場所をくれた」
というレティ達に励まされ、
バーナムは、チャリティを迎えに行きます。
「娘は出かけている」という義父。
しかし、子どもたちが「ママは海岸よ」と言います。
かつて夢を語り合った海岸で、
ふたりは再び絆を取り戻します。
しかし、銀行から融資を受けることはできませんでした。
「落胆させてすまない」と謝るバーナムに
「慣れっこだよ」と返すメンバー。
フィリップは、「バーナムと組んだおかげですべてを失った。
愛(家事をきっかけに、アンはフィリップの思いを受け入れました)と、友情と、誇れる仕事が残った」と言い、
自分が10%の取り分から貯金していたお金を使ってサーカスを再建しよう、と言います。
でも、建物を再建する資金はありません・・・
バーナムは「建物は要らない!マンハッタンは土地代が高い。港の近くの安い土地でテントでサーカスをやろう」と発案。
再建されたバーナムのサーカスには
大勢の観客が詰め寄せます。
バーナムは、ずっと自分のシンボルにしていた
父の形見のシルクハットをフィリップに譲り、
娘のバレエの発表会に駆け付けます。
サーカスのアフリカゾウに乗って。
感想
私は、ミュージカルの舞台が好きなんですけれど、
映像でミュージカルをやるなら、
やっぱり映像じゃないとできないことをやってほしいんですよ。
「グレイテスト・ショーマン」はその点、最高でした。
(映像だよね、特撮やCG使っているんだよね?ならそこをもっとがんばろうよ!
って気持ちになってしまう作品もあるので・・・)
最初の”A Million Dreams”の場面転換や、
時間経過の表現は、映像ならではの表現で、
この映画で一番好きな場面です。
あと、”The Other Side”のバーテンダーさんの動きも良い。
「クレイジー・フォー・ユー」の酒場のシーンをもっとスタイリッシュにした感じ。
音楽でちょっと気になったのは、
ジェリーはオペラ歌手だ、とフィリップがバーナムに説明しますが、
“Never Enough”は特にオペラ的な感じはなく、
完全にミュージカルナンバーで、ジェリーの歌い方もオペラ歌手、という感じではないことくらいかな。
曲や歌はすごくいいので、後から「そういえばオペラ歌手じゃないんだっけ?」と思った程度ですけれど。
P.D.バーナムは、
19世紀後半の実在の人物で、、
音楽やバレエのなどの舞台が上流階級のものであった時代に、
大衆が楽しめるショー、サーカスを作った興行師、とのこと。
映画で、ヒュー・ジャックマンが演じるバーナムはとにかくウルトラポジティプで、つぎつぎに斬新なアイデアを実現し、「できない理由は探さない」みたいな人です。
妻と娘たちを愛する家庭人としての側面も描かれていて
「興行師」という言葉につきまといういかがわしさは薄まっています。
ただし、
最初に博物館を持つために銀行から1万ドル借り入れる際に
倒産した会社の沈没した船の登録簿を担保にするのは、いわば詐欺だし、
レティ達を雇い入れて始めたショーを「偽物、いかさまだ」と指摘されると
「誇大広告でも客は満足して帰る」と返していますが、
今ならダメなことばかりです。
あと、予想はしていたけれど、
サーカスのメンバーについて、やっぱり差別的表現なのではないかが問題視されているみたいですね。
(読んではいないです。すみません。)
個人的には、別にそこに不快感はなかったです。
よく、これをやったよなあとは思いましたが。
メディアの記事などでは「エンターテイナーたち」という微妙な表現をしていますが、
フリークス(異形の)人たちが、自らの見た目を見世物にしている、という要素はやっぱりあります。
これも実際にはもっとエグいことがいっぱいあったと思うのですが、
やはり、多くの人が観ることを前提として製作されているので、ずいぶんマイルドな表現になっていると思います。
フリークスについてはアメリカ映画ですごいのがあったみたいですね。現在は完全版は残っていないのだとか。
(この映画の監督が映画界から消えてしまったことを考えると、こういう題材を選ぶのは、「グレイテスト・ショーマン」の製作チームや出演者にとってもリスクはあったんじゃないかと思います)。
バーナムのサーカスにはゾウ、ライオンなどがいましたが、
現在は、アメリカではゾウの使用は禁止で、サーカスにいたゾウたちは引退してアメリカ国内の保護施設と動物園に引き取られています。
バーナムの「それ犯罪でしょ」という行為や、
サーカスの「今はNGだよ!」という点は、19世紀後半という時代のものだと捉えないと
今の感覚で、映画にしてはいけないとか、マジメに糾弾するような描写以外ダメ、というのは違うような気がします。
いや、私は、ラストの、雪が降る中バーナムがアフリカゾウに乗って娘のバレエの発表会に駆け付ける場面は、絵面はファンタジーで素敵だけれど、「ゾウ、寒いの苦手だからね!」とは思いましたし、
あらすじ中にも書いたけれど、
火事の時に檻から出した動物たちは全員回収できたんだろうかとか、
サーカスが再建されるまで、どこで飼って、エサ代はどうしていたんだろうかとかが
気になりました。
そういうところを突っ込む話じゃないことは分かっています、はい。
バーナムには少年時代にリンゴをくれた女性の顔が普通のものではなかったことは強く印象に残っているのですが、
「でも同じ人間で、優しい人だった」と記憶していたんじゃないかと思うのです。
だから、チャーリーやレティに、
自分の舞台に出ればみんなに愛される、といったのはスカウトの口実だけじゃなく、
つぎつぎにオーディションにくる人達に「変わっている!すばらしい!」と言ったのも、
素直にそう思っていて、もちろん、差別があることは知っていたでしょうが、
彼自身には、「けがれ」的な感覚はなかったんじゃないかな、と思います。
また、芸術・ハイカルチャーと
大衆エンターテイメントの違いや対立もこの作品のテーマの一つだと思います。
バーナムは、偽物と言われても事実サーカスは人々を喜ばせている、と切り返しますが、
一方で、演劇やコンサートなどのハイカルチャー(当時は)への羨望を自分自身も持っていて、
それが妻の父親を見返したいという思いとも結びついています。
火事の後、バーナムの元を訪れた劇評家に
「君のサーカスは人々を喜ばせていたよ、芸術ではないが」と言われ、
バーナムも「そうだ(芸術ではない)」と返答しています。
しかし、エンディングでは
人々を幸福にするものこそが芸術である
という意味のバーナムの言葉が表示されます。
この流れだと、
映画の終わりか、あるいはその後、
バーナムは自分の仕事は芸術だ、と言えるようになったということなのかな。
チャリティの実家の場所
今回パンフレットを購入しなかったので、
映画を見ただけでは分からなかったところもいくつかあります。
その一つが、チャリティの実家の場所です。
成功したバーナムは、チャリティの実家の近くに家を持ちますが、
そのままマンハッタンのサーカスを続けていますので、通勤?ができる距離のはず。
一方、”From Now On”では、彼は列車に跳び乗ってチャリティの実家に向かいます。
ということは、ある程度距離は離れているんですよね。
子供のころバーナムとチャリティが心を通わせあい、
ラスト近く関係を修復する、という重要なシーンは、チャリティの実家近くの海岸。
となると、海側のNY郊外、といったところでしょうか。
現在、セレブの避暑地として有名なハンプトン地区は、
マンハッタンから車で2時間ということなので、
バーナムが毎日仕事に行くには遠すぎな気がしますが。
バーナムはツアーのために家を後にし、
チャリティは子どもたちと過ごしていますが
舞台化の話があるそうです
ヒュー・ジャクマンは来日時のインタビューで
「グレイテスト・ショーマン」に舞台化の話があることを
認めた、と報道されています。
これだけヒットしているコンテンツを映画だけで終わらせることはないだろうな、
とは思っていましたが、
やっぱり舞台化、という企画はあるんですね
舞台となると、
映画ほど特殊効果は使えません。
実現は数年後だと思われますので、そのころにはプロジェクションマッピングやVRを舞台に組み合わせるのは普通のことだとは思いますが。
「グレイテスト・ショーマン」では、
フリークスと呼ばれた異様な見た目の人々が多く登場するので、
そこをどうするかもありますね。
人種は、そういう人をキャスティングすればいいし、
髭のある女性や、アルビノ、巨漢はどうにかなりそうですが、
小人、となるとかなり難しそう。
またサーカスに登場する動物たちもそのまま本物を使う訳にはいかないので、
動物はナシかなあ。
「美女と野獣」は、
アニメ映画、舞台、実写映画、という公開の順序に観ていますが、
やっぱり、それぞれの手法で「何を表現できるのか」が違うので、
多少テーマや、キャラクターの設定、ストーリーには違いが見られます。
「グレイテスト・ショーマン」も舞台化される場合は、そういう違いが出てくるとは思います。