3月28日「土曜プレミアム・世界法廷ミステリー 第4弾」
2013年1月に起きた、
ロシアの名門バレエ団、ボリショイ劇場の
芸術監督セルゲイ・フィーリンが
顔に硫酸を掛けられる、という(バレエファンにとっては、)
ショッキングな事件を取り上げ、
日本のテレビ局として初めて、
容疑者の内縁の妻?への単独インタビュー
に成功した、という内容。
それにしても、番組の予告や、テレビ欄の
 
名門バレエ団硫酸事件…愛欲プリマ初告白
偽愛の「ブラックスワン」は誰だ!?
 
のコピーは
視聴率のための煽りだと分かっていますが、
ちょっとひどいと思います。
火曜サスペンス劇場じゃあるまいし。
事件が起きた当初、
ロシアのメディアは、
 
パーヴェル・ドミトリチェンコ被告が、
恋人のアンジェリーナ・ヴォロンツォワ(ボロンソワ)さんが、
フィーリン監督に白鳥の湖の主役・オデット姫役にしてほしい、
と直訴したとき、
太り気味だったことから、
フィーリン氏に「鏡を見てみろ。それがオデットか」と
断られたことを恨みに思って、
実行犯であるザルツキー容疑者に、
犯行を依頼した、
と報じていました。
 
新人のオルガ・スミルノワさんと、
アンジェリーナ・ヴォロンツォワさんが役を巡って争っていた、
とも言われていました。
これでは、まるで映画「ブラックスワン」そのままですね。
 
しかし、
パーヴェル・ドミトリチェンコ被告は、
「ザルツキー容疑者がフィーリン監督の顔を殴ることには同意したが、
硫酸を掛けるとは聞いていない」
と話しています。
 
また、
フィーリン監督自身、
容疑者の逮捕後初めてテレビのインタビューに対して、
 
事件の背後には、
誰か別の黒幕がいて、ドミトリチェンコ容疑者をそそのかしたのではないか、
 
と語っています。
 
また、アンジェリーナさんは、当時は
ボリショイの中では、下から二番目クラスのダンサーで、
主役のオデットを踊りたい、と直訴すること自体、
おかしい、というか、あり得ない、というか、
作り話めいているし、
本当だとしたら、かなりの勘違いです。
 
ボリショイ・バレエ団には、
フィーリン監督を中心とする、
アメリカの振付家の作品を上演するなどの改革派と、
 
フィーリン氏のライバルであるトップ・ダンサー、
ツィスカリッゼ氏を中心とする保守派に別れていて、
ドミトリチェンコ被告とアンジェリーナさんは、
こちらに属していたそうです。
 
そこで、本当は、これらの派閥の
権力争いや、
または、それを利用した他の勢力が仕組んだことでは?
とも考えられているのです。
 
アンジェリーナ・ヴォロンツォーワさんは、
2013年12月にボリショイ劇場を退団し、
ミハイロフスキー・バレエに移籍しています。
 
日本では、新国立劇場以外、
ほとんど全て中小規模の私立バレエ団ばかりで、
Kバレエ以外は、プリンシパルでもバレエ公演のみでは食べられないだろう、
という状況ですが、
ロシアでは違います。
 
ボリショイ劇場のソリスト、
芸術監督、というのは名誉のある仕事ですし、
監督となれば、利権も絡んでいるので、
単なる、痴話げんかが理由ではないだろうと思われるんです。
 
バラエティ番組ですから、
どこまでちゃんと放映してくれるかはわかりませんが、
注目しています。
※番組を見ました。
○アンジェリーナ・ボロンソワさんへのインタビュー
・学生時代に、フィーリン氏に別のバレエ団にスカウトされたが、
ボリショイに入るために断った。
その後、フィーリン氏がボリショイの芸術監督になると、
重要な役から降ろされてしまった。
・フィーリン氏は、新人のオルガ・スミルノワさんを抜擢しているが、
それは、2人が男女の関係にあるからだ。
・懲役6年の判決を受けたドミトリチェンコ被告を待つのか、という質問には
答えられない。
などといったものでした。
元同僚のニコライ・ツェスカリゼは、
オルガはアンジェリーナよりも実力がない、
などと語っていました。
○ドミトリチェンコ被告の証言
ドミトリチェンコ被告は、
裁判で、フィーリン氏は、
配役のためのバレリーナに関係を強要している、
セクハラをしている、などと証言し。
ボリショイの他の幹部も含めて、セクハラを受けている、
と訴えるダンサーもいる、という内容の放送がありました。
2013年12月3日、懲役6年の実刑判決。
「スパルタクス」の主役などを踊れるダンサーだったのに、
もったいない。
ただ、彼も、容姿の雰囲気が、
いわゆるノーブルダンサー(王子役)ではないので、
プリンシパルには慣れなかったかも知れません。
うーん、、、
なんかやっぱり、週刊誌的興味本位の取り上げ方、
としか思えませんでしたね。
踊りの実力云々と別に、
バレエにはキャラクターというものがあるので、
今、ミハイロフスキー劇場で、「リーズの結婚」のリーズ役(明るい村娘)役などを踊っている
アンジェリーナさんは、
やっぱり、ボリショイの求める白鳥ではないと思うんですよ。
逆にオルガ・スミルノワさんは
リーズや、「コッペリア」のスワニルダ役には合っていないと思うし。
ボリショイで活躍していた、
岩田守弘さんが、背が低いから王子役は踊れず、
「白鳥の湖」の道化役が当たり役だったことと同じです。
でも、ロシアのバレエを一度も見ていない人が
このテレビ番組を見たら、
やっぱり「痴情のもつれ」みたいに思っちゃうんでしょうねえ。