ドキュメンタリー

明治時代にやってきた伝説の霊獣シフゾウとは?

月29日放送「歴史ヒストリア」は

あしたは動物園に行こうスペシャル。

上の胴部園開園当初、ヨーロッパからやって来た「伝説の霊獣」をめぐる奇想天外なドタバタ劇

として、番組で取り上げられた霊獣は「麒麟(キリン)」でしたが、
キリン以外にも、上野動物園には伝説の霊獣が明治時代にやってきたのですね。

伝説の霊獣「シフゾウ」とは?

シフゾウは、漢字で書くと「四不像」
もともとは麒麟や竜とおなじく、空想上の生き物で、明代の物語である「封神演義」に神獣として登場します。

体はロバ、首はラクダ、ひづめはウシ、角はシカ

または

顔はウマ、尻尾はロバ、ひづめはウシ、角はシカ

などと言われていました。

4種類の動物の姿に似ているのにそのいずれでもない、という意味で
四不像(中国語の発音ではスープシャン)というのですね。

頭は猿、手足は虎(とら)、体は狸(たぬき)、尾は蛇、声は虎鶫(とらつぐみ)に似る、とされる
日本の「ぬえ」のようですね。

このシフゾウ、現実の動物としては、中国で麋鹿(ミールー)と呼ばれるシカの一種です。

半月ごとの季節の変化を示す二十四節気を、さらに5日ずつにわけて、気象の動きや動植物の変化を表す七十二候で、
12月27日ごろからの5日間を、麋角解・さわしかのつのおつると言いますが、

この「麋」はシフゾウのことではないか、とされています。
というのは、日本にいるシカの角が落ちるのは春先で、冬至のころではないからです。
中国でもアカシカは角が落ちるのは春。

ちょうど冬至のころ角を落とすのがシフゾウなんですね。

ちなみに、2016年の麋角解は、2016年12月26日~12月30日です。

こちらが現存のシフゾウの姿。

日本のシカよりは大柄ですが、普通のシカっぽいです。

東京では多摩動物公園で見られます。
普通にいるので、「伝説の霊獣・珍獣」と思っていると拍子抜けするほどです・・・

ですが、野生のシフゾウは絶滅してしまった、という過去があります。

シフゾウの絶滅

シフゾウは中国北部から中央部にかけての沼沢地に生息していましたが、
清代にはほぼ絶滅しており、
北京郊外にある清朝皇帝の狩場である南苑にわずかに残っていました。

しかし、1895年に北京で起きた洪水と、1900年の義和団の乱による戦乱のため、
南苑のシフゾウはメス一頭を除いて死に絶え、1920年最後の一頭の死亡をもって絶滅した、とされました。

しかし、イギリスの大地主・ベッドフォード公爵が、
ヨーロッパの動物園からシフゾウ18頭を買いとり、自分の荘園で繁殖させて200頭ほどに増やしました。

ベッドフォード伯爵が増やしたシフゾウを
他の動物園に分けてさらに増やす、ということが試みられ、
1985年には元の生息地である南苑に戻されたことにより、野生のシフゾウが復活。
その後、江蘇省に設けられた保護区にも放されてします。

絶滅の原因の一つは群れでいないと繁殖しにくい、という性質があるようですが、
多摩動物公園ではかつて、アリサ、というメスが生まれました。
アリサはいまでも元気でいますよ。

上野動物園開園当初のシフゾウをめぐるドタバタ劇とは?

南苑のシフゾウがフランスのダビッド神父によってパリ博覧会で紹介されると、
ヨーロッパの各国は、競ってシフゾウを手に入れようとしました。

1870年、イギリスのオールコック卿が五頭のシフゾウを入手し、ロンドンの動物園で飼育することになりまいた。

オールコック卿は、安政6(1859)年から5年間、日本で公使を務めていた人物で、
この頃は北京駐在のイギリス公使となっていました。

上野動物園が開園した明治15(1882)年に特命全権大使として北京に着任した榎本武揚(えのもとたけあき)は、
シフゾウを英国に出したのなら、日本にも、と清国政府と交渉したのですが、失敗します。

そこで榎本武揚は、明治18(1885)年、天津条約の交渉で清にやってきた総理大臣・伊藤博文に頼み、

伊藤博文が条約調印の傍ら、清国の李鴻章(りこうしょう)北洋大臣に、
シフゾウ問題を善処せよ、と交渉、

結果、明治21(1888)年4月21日オス・メス二頭のシフゾウが榎本武揚を通して日本へ送られ、上野動物園に到着します。

こうした外交上の騒動の末にやっと上野動物園に来たシフゾウですが、
明治39(1906)年に二頭の子供たちは死亡し、その時点で日本からはシフゾウがいなくなりました。

というか、二頭だけもらって、海外の動物園との個体交換などをしなければ、
いずれどんづまりですよね・・・

現在は、多摩動物公園のほか、広島市安佐動物公園 (広島市)
熊本市動植物園 (熊本市)で飼育されています。

熊本市動物園のシフゾウたち、先日の地震では無事だったようですが、怖かったでしょうね・・・



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