twitterのTLで話題になっていたインド映画
「バーフバリ 王の凱旋」(バーフバリ2)を
丸の内ピカデリーで見ました!
今年初めて観た映画がこれで
なんかもういろいろ濃くてすごかったので
感想をまとめておきます。
バーフバリ2
「バーフバリ 王の凱旋」(英題:Bahubali 2 The Conclusion)
2017年公開 監督:S・S・ラージャマウリ
まだ日本語字幕が付いたDVDやブルーレイは出ていないみたいです。
→発売されました!
「バーフバリ」は
「伝説誕生」と今回の「王の凱旋」の2部作になっています。
「王の凱旋」では、冒頭に、日本語ナレーション付きで、
「伝説誕生」のあらすじが説明されるので、
「伝説誕生」を見ていなくても、一応は大丈夫。
でも見終わってみると、やはり第1部をDVDなどで見てから、
「王の凱旋」を見たほうがよいように感じました。
理由は後で書きますね。
バーフバリ1「伝説誕生」のあらすじ
ナレーションで説明される
第1部のあらすじは、次のようなもの。
『ある村の近くで、川に沈んだ女性が死力を尽くして水面に掲げていた赤ん坊が助けられ、シブドゥと名付けられて村長の妻の子として
育てられる。
25年後、シブドゥはたくましい(というレベルを超えていますが・・・)
青年に成長。
村は大きな滝の下にあり、シブドゥは幼いころからその上の世界に興味を持ち何度も登ろうとしては落ちます。、
あるとき、滝の下で女性の仮面を手にして、
美しい天女のイメージに導かれ、ついに登り切る。
シブドゥはそこで出会った天女そっくりの女戦士アヴァンティカと恋に落ちます。
彼女はマヒシュマティ王国の暴君バラーラデーヴァに滅ぼされたクンタラ王国の一党で、
王に幽閉されているデーヴァセーナ王妃を救い出そうと
戦っていることを知る。
シブドゥは、王妃救出に向かい捕えられたアヴァンティカを助け、
黄金のバラーラデーヴァ像建立式で、像の綱を引く民衆に紛れ、
自らがマヒシュマティに潜入。
黄金の像が倒れそうになったときに一人でそれをとどめ、
奴隷たちは「バーフバリが戻ってきた」と、バーフバリの名を叫び出す。
シブドゥは宮殿に火をかけて混乱に乗じ、
デーヴァセーナ王妃を救い出すが、
バラーラデーヴァの王子バドラにつかまってしまい、
シブドゥは兵士を全滅させ、
バドラの首をはねる。
王家の忠実な家臣であるカッタッパはバドラ王子を殺した
シブドゥに切りかかるが、
雷雨の中でシブドゥの顔を見ると
「バーフバリ」と叫んでひざまずく。
カッタッパは、シブドゥがマヒシュマティ国の王子バーフバリである、と言い、
シブドゥの父のアマレンドラ・バーフバリはかつて王位につくはずだったが、
バラーラデーヴァの陰謀で王位を奪われ、
仲間の裏切りによって殺された。
そして、その裏切り者は自分だ、
と告白する。』
バーフバリ2「王の凱旋」本編の感想
2部である「王の凱旋」は、本編の3分の1以上、
カッタッパが語る、
シブドゥ=マヘンドラ・バーフバリの父親であるアマレンドラ・バーフバリの物語なんです。
カッタッパによる長い回想が終わってから、
「そうだ!ここまでは回想だった!」となりました。
そして、いよいよマヘンドラ・バーフバリと、
バラーラデーヴァとの対決となり、
そこがクライマックスなのですが、
クライマックスまでマヘンドラがほとんど登場せず、、
父のアマレンドラと子のマヘンドラは俳優さんが同じなので、
マヘンドラ自身に思い入れしにくいかな、と私は感じました。
これはやはり、シブドゥ=マヘンドラが活躍する
1部を見て、その後で2を見たほうが
ラストの戴冠式の感動もより大きいんだろうなあと。
なので、1部を見ていない人は
1部を見てから、がベター。
とはいうものの、キャラに思い入れしている間もなく、
映像のすごさと、テンションの高さに圧倒されて
すげー、と思っているうちにラストになる、
という面もあるんですけれどね。
また、「1を観てから」とか言っているうちに
「王の凱旋」の上映が終わってしまったらもったいなさすぎるので、
もうここは勢いで「王の凱旋」を観ちゃった方がいいかもしれない。
私は映画が始まってしばらくはなかなかテンポに乗れなかったのですが、
アマレンドラが王位につく前に、
シヴァガミの勧めでカッタッパと諸国漫遊の旅に出て、
クンテラ国の王女、デーヴァセーナに恋をして、
「愚者」のふりをして近づく、
というあたりから、
昔話や神話(「バーフバリ」はインドの叙事詩マハーバーラタを下敷きにしているそう)の世界と、
現代的な映画の描写の融合を楽しめるようになりました。
指切り落としたり、
首が飛んだり、
人体が切られる「痛い」描写は結構多くて、
実はそういうのはちょっと苦手なんですが・・・
まあ、なんとか、大丈夫、だった。
(ちなみに、G指定=General audiences なので、年齢制限はないのですが、
うーん・・・小学校低学年が見るのはやめたほうがいいのかなあ、と思います。)
クンテラ王国が盗賊(ピンダリ)の一団に襲われた時、
アマレンドラが、ウシ(インドによくいる白いコブウシです。ブラフマン種かな?)の群れの
角に火をつけて暴走させるのですが、
それはウシがかわいそう・・・と思ったり。
このウシや、
バラーラデーヴァの戦車を引くウシ(こちらは茶色いウシ)、
最初の方で、シヴァガミの荒行の途中で暴れ出すゾウ、
などの動物のシーンは一部CGだと思います。
ゾウは、ターメリックぶかっけられて静まった後からは
多分本物。とても良い顔をした魅力的なゾウさんです(←ゾウ好き)。
この後アマレンドラが、ゾウの鼻で持ち上げられるのは吊っているか、
合成かな。
上野動物園で、飼育員さんがゾウの鼻から背中に上ったのを見たことがありますが
その時は手はついていました。
人間の群衆は3万人動人して戦いのシーンなどを撮ったとか。
演出としてはベタ!と思うところもあり、
デーヴァセーナが不思議なパワー(ピンク)で高波を立て、
アマレンドラに挑むような視線を向けると、
アマレンドラも不思議なパワー(ブルー)を船に注入して
なんと白鳥の形の帆船が空を飛ぶ、
という場面は、心象風景・イメージなんでしょうが、
ぶっとびすぎです(笑)
でも楽しい。
一方で、
アマレンドラとデーヴァセーナがマヒシュマティ王国に到着した時
帆船の柱が、ゾウの形の像の足にひっかっかって折れるシーンで不吉な予感を表したり、
最初のシヴァガミの荒行と
クライマックスでデーヴァセーナが火の燃える鉢を頭に載せて
シヴァ神殿を3周するシーンが対になっていたり、
巧みに構成されている、と感じる場面も多かったです。
私が読んだ映画評の中で、「ライオンキング」の要素がミックスされているように思う、
という指摘があったのですが、
実は、自分も映画を見ていて
兄弟(アマレンドラ・バーフバリとバラーラデーヴァは本当は従兄弟ですが)による王権争いや
戴冠式の場面、シヴァガミが赤ん坊を両手で掲げる場面など、
「ライオンキング」っぽいと思うところがありました。
「バーフバリ」は、3代目のマヘンドラが、村長の子として育ち、物語の途中で自分が偉大な王の正当な後継者であると知る、
という貴種流離譚(きしゅりゅうりたん)です。
「ライオンキング」では、シンバは物心ついてから王国を出て行きますが、一度は王位を継ぐという自分の立場を忘れようとするものの、
再び立ち上がります。
直接的なオマージュというより、「バーフバリ」も「ライオンキング」も神話伝説的な型を持った物語、という点が共通しているので、
表象としても似てくるのでしょう。
「バーフバリ」では、
バラーラデーヴァの父親ビッジャラデーヴァは身体障害があり、
そのために弟のヴィクラマデーヴァに王位を奪われた、
というコンプレックスがあり(本当は性格や知性など他の理由があると思われます)、
3代にわたる王位争いと復讐という、
「ライオンキング」よりもさらに複雑な話になっています。
また、「ライオンキング」のナラが強い女性であるように、
「バーフバリ」の女性陣シヴァガミ、デーヴァセーナ、アヴァンティカは
いずれも非常に強い女性、ほんとに男前です。
しかし、シヴァガミは賢明で政治的な手腕に優れていますが、
実の息子のバラーラデーヴァを時期国王に選ばなかったことに
ひけめがあり、そのために判断を誤ってしまう、という人間的な欠点もあります。
デーヴァセーナ王女も相当強い、苛烈、ともいっていい女性。
王女がマヒシュマティ国からの婚礼の申し入れ(これはバーフバリでなく、
バラーラデーヴァとの縁談なのですが、考えてみれば、当の王子の名前すら
書いていない、って失礼ですよね)を断る場面は、
「アラジン」(舞台版の方ね)のジャスミンが、
アブダラ王子やアリー王子の求婚を断る場面にも似ています。
アマレンドラ・バーフバリこそが王になるべき、とバラーラデーヴァ王にもシヴァガミにも正面切って言ってはばからない
デーヴァセーナの態度が、アマレンドラに謀反の意思あり、とするバラーラデーヴァの陰謀に利用された面もあります。
古代インドを舞台にした映画で、ここまで女性が強い姿勢で
物語を動かしていくのはちょっと予想外でした。
もう一つ、「アラジン」(舞台版)を思い出したのは、衛兵部隊の扱い方です。
命令で動いている彼らはどちらが正しい、といったことは言えない立場の「駒」なんですよね・・・
まあ、「アラジン」はディズニーなので、「バーフバリ」ほどかわいそうなことにはなっていないし、誰も死んだりしていないんですが。
それから、奴隷身分である忠臣のカッタッパが、アマレンドラを殺した理由ですが、
私はずーっと、何か行き違いがあって、カッタッパがアマレンドラに裏切られた、と
勘違いをしてしまうのかな、と予想しながら見ていました。
また他の方の感想では、バーフバリに叔父と言われるくらいの信頼関係があったのに、
バラーラデーヴァが王位につくと裏切ってしまう、と書いているものがありました。
で、映画の実際の成り行きはどうだったか、というと、
バラーラデーヴァの陰謀で、アマレンドラが謀反を企てていると思い込んでいたシヴァガミが、
カッタッパにアマレンドラの暗殺を命じ、
カッタッパが断ると、「それなら自分が殺す」と言ったために、
王族の手を汚すわけにはいかない、とカッタッパが暗殺を引き受けた、というもの。
バラーラデーヴァの命令だから、というよりも
シヴァガミと王族全体を守るためだったのではないかと思います。
それにしても、直前まで自分を守って重傷を負いながら戦ってくれたアマレンドラを殺す、ってすごいですけれどね・・・
でももしかしたら、シヴァガミがアマレンドラ処刑を決意したに至って、カッタッパは、
「神のようなアマレンドラは、こんな現世にいてはいけないのではないか」
と考えたのかな、とも思います。
そこよりも私が「え、そうなの?」と思ったのは、
マヘンドラ・バーフバリの戴冠式に、
バラーラデーヴァの父親ビッジャラデーヴァがいたことです。
ビッジャラデーヴァはデーヴァセーナの従兄弟クマラを騙して
バラーラデーヴァ暗殺の濡れ衣を着せた上で殺すことに加担しています。
バラーラデーヴァを焚きつけてたのはこの人、という見方もできるし。
でも許されちゃうんですかね?
(ええかっこしいのヘタレだったクマラが、盗賊との戦いを通して底力を発揮し、
以後、アマレンドラの親友になる、というエピソードが好きだったので、
クマラが殺されたのはショックだった・・・)
<追記>
↑
2回目見てビッジャラデーヴァにとっては、
この後生き続けることこそが、今までの所業の報いになるのかな、と思いました。
自分には絶対に従うと思ったいたアマレンドラ・バーフバリに逆らわれた時の
シヴァガミが目をカッと見開いて息をのむ表情と、
奴隷身分のカッタッパが、アマレンドラ・デーヴァセーナ夫妻に身内として扱われるときの
「ハッ」となる表情が、ドストレートでツボでした。
こういうのも欧米文化圏だったらもっと微妙な表現になるのでしょうが、
もしかしてインド人の感情表現が本当にこういう感じなのでしょうか?
←後で知りましたが、インドの伝統的な舞踊に、顔の表情や仕草で感情を表す、という手法があるそう。
まとめ
なんというか、あらゆる要素が「濃かった」です。
「ライオンキング」「アラジン」
に似ている、と書いた部分もありましたが、
描き方はそれらの何倍も強烈です。
インド映画にはボリウッド、と呼ばれる北インドのものと、
南インドのものがあるのですが、
「バーフバリ」は南インドの映画で、言葉もヒンディー語ではないし、
俳優さんも「えっとこれが25才?」と思うようなちょっとおっさんっぽいタイプ(でもすごくかっこいいですよ)
絶世の美女、デーヴァセーナも確かに美人だけどかなりのムッチリタイプ。
美人とお金持ちは太っている、
はいまだに生きているんだなーと思って見始めたら、
むしろ、男も女も細すぎは貧相、これくらいがゴージャスだよ!と思えてきた。
演出が泥臭い部分もありますが
今まで見たこともない映画体験をしてみたい、という方には超おすすめ。
ただし、生首が飛ぶシーン他、人体をスパスパ切る場面が多いので
その点注意が必要です。
「絶叫上映」というのがあったそうですが、
たぶん、シーンと鑑賞するよりも、
「マサラ上映」みたいな、観客もワーッと叫んだり、笑ったり、踊ったり、つっこんだり
したほうがより、楽しくみられるんだろうなあ。
そちらも体験してみたいです!
追記:
「伝説誕生」も見ました。そちらの感想です。